店員「324円になります」
男(あれ? 千円札ないのか、しょうがないな)
男「すみません、万札で」
店員「!」
店員「こ、これは……一万円でしょうか!?」
男「はい」
店員「い、い、い、一万円入りまぁぁぁぁぁっす!!!」
バイトしてたコンビニは「万券入ります」だったな
チャラ店員「マジっすか!?」
店員「うん……これ見てくれ!」
女店員「まぁっ!」
チャラ店員「すっげー! ガチっすね!」
ザワザワ… ワイワイ…
店員「あ、あの……少々お待ち頂いてもよろしいですか? 店長を呼んで参りますので」
男「いいですけど」
店長「なんだね?」
店員「これが入りました!」
店長「……一万円札!?」ガタッ
店長「お客様がこれをお支払い下さったのですか!?」タタタッ
男「うむ」
店長「な、なんというお方だ……!」
店長「……お客様を見込んで、実はお願いがあるのですが」
男「聞かせてもらおうか」
男「なぜ?」
店長「実はこのコンビニは弱小もいいところでして、今のままでは近い将来潰れてしまうのです」
店長「しかし、あなたが店長をやってくれればきっと再建できるはず!」
店長「どうか……どうかお願いいたします! 当店をお救い下さい!」
男「よかろう」
店長「えっ……」
男「君の願い、聞き届けよう。このコンビニを必ずナンバーワンのコンビニにしてみせる!」
男「接客業では“お客様は神様”という考え方があるが、私の考えは違う」
男「客はナメクジだ! ダニだ! ミジンコだ!」
男「人である君たちならば、奴ら下等生物を満足させることなど造作もないことだろう!」
男「ゆけい! 精鋭たちよ! このコンビニを立て直してみせろ!」
店員「御意ッ!」
女店員「御意ッ!」
チャラ店員「御意ッ!」
ウオオオオオオオオッ!!!
男「ふぅ~……」
男「気分がいいと葉巻もうまい」
男「今日の売上はどうか?」
店長「はい、どの品物も飛ぶように売れ、もはや地域No.1コンビニの座は揺るぎないものかと」
男「ご苦労」
店長「ところで店長、本社から社長が参られて、ぜひ店長とお会いしたいと……」
男「通せ」
男「うむ」
社長「今やここは、我が社の中で最も売上をあげているコンビニだ。大したものだ」
男「私は店長として、果たすべき義務を果たしているだけだ。礼を言われるようなことではない」
男「さて、まさかそんなことを話しにわざわざ来たわけではあるまい?」
社長「うむ、かつてこのコンビニに一万円を入れた君を見込んで頼みがある!」
男「話してみろ」シュボッ…
嫌いじゃない
男「……」
社長「コンビニ業界が競争が激しい世界であることは君もよく知っていよう」
社長「もはや、私のような弱者が大将ではこの戦国時代を勝ち抜けぬ」
社長「一万円を躊躇なく支払う君のような圧倒的強者でなくば、この激務は務まらん!」
男「よかろう」
社長「おおっ……!」
社長「ありがとう、ありがとう……!」
男「心配するな、社長。この私が我がコンビニを業界トップにしてみせる!」
出世しすぎ
男「今日から私がこのコンビニチェーンの社長となった!」
男「しかし、私は君たちにライバルのコンビニを打ち倒すことなど要求しない!」
ザワッ…
男「なぜなら奴らはライバルなどではない!」
男「奴らはしょせんアリだ! ムシケラだ! ウジムシだ!」
男「人である君たちがおくれを取ることなど断じてありえない!」
男「さあ、ゆけ! 真のコンビニとは何か、世の中の有象無象どもに思い知らせてやるのだ!」
ウオオオオオオオオオッ!!!
店員「社長」
男「なんだ?」
店員「セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン、全て吸収し、傘下に収めました」
男「ご苦労、下がってよいぞ」
店員「はっ」シュザッ
男「……」
男(コンビニ業界も制覇してしまったか……)
男「もしもし」
総理『どうか総理になって下さい!』
男「断る」ガチャッ
プルルルル…
男「もしもし」
米大統領『アメリカ大統領になってくだサーイ!』
男「断る」ガチャッ
男(我が名声にこのようなオファーが蛾のように群がってくるが、どれも引き受ける気にならぬ)
男(もっと……もっと我が血を沸き立たせるような話が舞い込まないものか……!)
男「む?」
パァァァァ…
男「な、なんだ?」
女神官「はじめまして」
男「君は……?」
女神官「私は……この世界からは≪異世界≫と呼ばれる世界から来た神官です」
女神官「神からのお告げを受け、やって参りました」
男「ほう……神に仕えし者か」
女神官「あなたは店でイチマンエンを支払ったと聞いております」
男「その通りだ」
女神官「そのあなたを見込んで、お願いがあるのです」
男「聞かせてもらおうか」
男「魔王……!」
女神官「どうか、私たちの世界に来て下さらないでしょうか」
女神官「あなたとイチマンエンの力で、私たちの世界をお救い下さい!」
男「むむ……」
男(異世界の魔王を倒せだと……? 実に面白そうだ)
男(血湧き肉躍る話であるが、社長である私がいなくなるわけには……)
店員「――社長」
女店員「どうか、社長の好きなことをなさって下さい!」
チャラ店員「大丈夫っすよ! オレらだって社長の留守くらい守れるっす!」
男「お前たち……!」ジーン…
男(そうだ、忘れていた。我が部下もすでに立派に成長しているではないか……!)
男「分かった……しばしここを離れ、異世界とやらに向かおう。一万円とともに!」
女神官「ありがとうございます!」
部下たち「行ってらっしゃいませ、社長!!!」
ヒュゥゥゥゥゥ…
男「ここが君たちの世界か……ひどく荒れ果てているな」
女神官「はい、魔王の侵略によって、町や村は破壊され、人々の心は荒廃しきっています……」
スライム「ピギャァァァッ!」バッ
女神官「きゃあっ!」
男「――危ないッ!」
ザンッ!
スライム「グギャァッ……!」ドザッ
女神官「イチマンエンでスライムを……!」
男「我が万札に切り裂けぬものなし」
男「この一万円にかけて誓おう。この世界、私が救ってみせると!」ピラッ
風呂入ってる間に落ちるなよ?
他の異世界
銀河
宇宙
他の宇宙
まだまだありそう
女神官「ご要望通り、生き残りの兵士たちを集めました」
男「ご苦労」
男「諸君、これが一万円札だ」バッ
ザワッ…
「おおっ!」
「あれがイチマンエン!」
「なんと神々しい……!」
男「私と一万円がこの世界に入った以上、もう安心して欲しい。世界は救われたも同然!」
男「魔王などボウフラに過ぎぬ! アブラムシに過ぎぬ! アメーバに過ぎぬ!」
男「人である我らが負ける道理はない! 我と共に栄光ある勝利をつかもうぞ!」
男「ゆこう、勇者たちよ!!!」
ウオオオオオオオオオオオオオッ!!!
女神官(一瞬で人々の心を掴んでしまった……!)
ウオォォォ…… ウオォォォォ……
兵士A「西方面の魔物、完全に退却いたしました!」
兵士B「東方面の魔王軍を退けました!」
男「ご苦労」
兵士C「報告です!」バッ
男「なんだ」
兵士C「4ねえっ!」
男「むんっ!」ザンッ!
兵士C「グゲェ……!」ドサッ
女神官「魔物が化けていたなんて……!」
男「この程度の浅薄な策で私を討とうとは、敵も相当焦っておるな」
女神官「あのドラゴンは危険です! 下がって下さい!」
男「いや、心配無用だ」
ドラゴン「ギャオオオオオンッ!」ボォォォォォォッ
男「一万円ガード!」サッ
ドラゴン「ギャオ!?」
男「一万円スラーッシュ!!!」
ズバァッ!
ドラゴン「ギャオォォ……」ズゥン…
女神官「イチマンエンってすごい……!」
ヒュゥゥゥゥゥ…
男「やっと会えたな、魔王よ」
魔王「貴様がイチマンエンを持つという人間どもの救世主か……」
魔王「せっかくあと少しで人間を滅ぼせるというところで、全てを台無しにしおって……」
魔王「今ここで貴様を抹殺し、再び人間どもを絶望の淵に叩き込んでくれるわ!」
男「それは不可能だ。私と一万円がある限りな!」
魔王「暗黒の波動を受けてみよ! カァァァァッ!」バリバリバリッ
ズガァァァンッ!!!
男「ぐっ……!」
ズバァッ!
魔王「ククク、この程度か」シュゥゥゥ…
男(効き目が薄い!)
魔王「今度は暗黒の火炎だ!」ゴォワァァァァァッ
男「ぐぅ……! ガードしても防ぎきれん……!」
女神官(男さんが押されている……!)
兵士A「おう!」
兵士B「おう!」
ワァァァ……! ワァァァァ……!
魔王「無駄だッ! ザコが何万束になろうとワシには傷一つつけられぬ!」
ドゴォォォォォン… ズガァァァァァン… ウワァァァァァ…
男「……!」
男(くっ、やはり万札でなければ倒せない……!)
男(だけど待てよ……? あれだけの耐久力を誇る魔王なのに、なぜか腹部への攻撃はガードしている)
男(分かったぞ……! あそこが魔王の急所(コア)なのだッ!)
男「……そうと分かればッ!」
魔王「ぬ……まだ動けるのか!」
男「長年貴様が虐げてきた人々の恨み、痛み、苦しみ……思い知れ!」
男「一万円・テンサウザンドスラァーッシュ!!!」
ズバババババババッ!
魔王「グハッ……!」
女神官「入った! 一万円が急所に入りました!」
魔王「こんなバカな……! ワシが、人間如きにィィ……!」
ボシュゥゥゥゥゥゥ…
男(や、やった……!)ハァハァ…
男「魔王は滅びた……もう君たちを脅かすものは何もない」
女神官「ありがとうございます、これでこの世界は救われました!」
ワァァァァァ……!
「イッチマンエン!」 「イッチマンエン!」 「イッチマンエン!」
男「これは私だけで成し遂げたことではない……」
男「みんなの力があったからだ!!!」
ワアァァァァァ……!
読むのやめるわ
男は最強で絶対に圧勝するのが好きで読んでたのに
「何も努力せず巨大な力を手に入れその力によって美少女たちに愛されまくり人々から尊敬と賛辞を得る」という内容じゃないとなろうじゃ生きていけないよ
男「うむ、名残惜しいが私には待っている部下たちがいる」
女神官「ではせめて、ぜひあなたの名をこの世界の殿堂に残したいのですが」
男「……」
男「私は大したことはしていない。それに――」
男「本来いなかった者の名をこの世界に残しては、やはり後々のことを考えるとよくないだろう」
男「後世で私の名を騙ったり利用する者が出ないとも限らぬしな」
女神官「そう……ですよね……」
男「しかし――」
女神官「はいっ!」
女神官「では……イチマンエン入ります!」
~おわり~
やっぱ一万円ってすげーわ
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1568035026
http://antennasync.me/listJson1.2.1a_livedoor.js
Source: イケイケ速報