アドバイザー「さ、どうぞ。ご自由にお話し下さい」
男「はいっ!」
女「よろしくお願いします」
男(婚活とは正直にカードを出し合って、よりよいパートナーを選択する場――)
女(などではないッ!)
男(いかに自分を大きく見せ、相手のウソを見抜き、イニシアチブを握るか、の騙し合いッ!)
女(相手を欺き、どうやって結婚まで持ち込むかの戦場なのよッ!)
男「……」
男(いきなり来たか……)
男(俺の年収は400万ちょっと、といったところ……)
男(だが、婚活サイトなんかだと“女は最低600万はないとなびかない”なんてのを見たことある)
男(というわけでここは×2をして800万――)
男(いや、より安全に1200万でいこう。3倍だァ!)
男「1200万です」
女「まぁっ……」
無理に虚勢張ったところでたかが知れてるし
収まるところにしか収まらないと思うけどな
女(どうせ多めに申告してるに違いない……私の読みじゃ1/2、いや1/3ぐらいかな……)
女「すごい!」
男「どうも……」
女「私なら、年収なんて400万ぐらいで十分満足ですのに……」
男「!?」ビクッ
女(ほぉら……やっぱり)
男(こ、このアマ……!)
女「ビンゴ」ボソッ
男(なにがビンゴだクソが! てめえ穴だらけにしてビンゴカードみてえにしてやろうかァ!)
何の意味が
女「ええ」
女「和食に中華、フレンチ、イタリアン、なんでもいけますわ」
男「ほぉう、それはすごい!」
女(ま、実際には玉子焼きとハンバーグぐらいしか作れねーけどな)
女(未だに女に料理上手を求める男ってえのは多いし、これぐらい盛っておいた方がいいだろう)
男「……」
男(どうせ、一品か二品しかレパートリーねえだろ。よし……)
男「あなたのような奥さんがいたら、毎日色んな料理が食べれるでしょうね」
女「それはもう……」
男「俺だったら毎日玉子焼きとハンバーグでも満足しちゃいますけど」
女「!?」ギクッ
男(はい、当たりィ!)
女(やられたァァァ!)
男「チェックメイト」ボソッ
女(なにがチェックメイトだ! てめえの骨を材料にチェスの駒作ってやろうかァ!)
女「……」メキメキッ
アドバイサー「あ、あの……」
アドバイサー「男さんはたしか、パソコンがご趣味だとか……」
男「ええ、プログラミングなどを嗜んで――」
女「面白いですよね、匿名掲示板への書き込みって」クスッ
男「……!」ビキッ
女(どうせプログラミングとプロミスリングの違いも分かんねーだろが、このゴミ!)
女「はい」
女(ま、ぶっちゃけダイエットのためにやってるんだけどな)
男「へえ……ダンスなんかしなくても十分スリムに見えるけどなぁ」
女「……!」メキッ
男(へったくそなダンスしてタンスに小指でもぶつけてろや、このアマ!)
女「……」ゴゴゴゴゴ…
アドバイザー(なんだよ……なんなんだよこの空気……)
アドバイザー(こりゃダメだな……この二人はカップル不成立だ。とっとと終わらそう)
アドバイザー「えぇと、ここで気が合ったら、次はデートをしてもらうことになってるんですが……」
アドバイザー「あなた方はどうします? ……デート」
男「します」
女「します」
アドバイザー「するの!?」
男(ついに着る時が来たか!)
男(こいつを着れば、あの女程度ならイチコロだぜ!)バサァッ
女(女にあって男にない武器……それは化粧!)
女(化粧次第で、女の魅力は10倍……いや100倍にもなるッ!)ヌリヌリヌリヌリ
女(あのクソ野郎をノックアウトしてやるぜ!)ポフポフポフポフ
女「ううん、ちっとも」
男「そうかい、はりきりすぎて早めに来すぎたものかと……」
女「……!」メキ…
女「そっちこそ、緊張して眠れなかったのか、目が充血してるわ」
男「……!」ビキ…
男「ハッハッハッハッハ……」
女「ホッホッホッホッホ……」
女「……」
女「ステキなジャケット!」
男(勝ったッ!)
女「着なれてなさそうなところが特にステキ!」
男(おのれええええ……!)
女(私のターン! 見よ、この化粧術! 惚れ直しちゃうでしょうよ!)
男「今日の君は一段とキレイだね!」
女(だろう?)
男「化粧がまるで広辞苑みたいだ!」
女(“厚い”ってことかァァァ!)
女「あなたに任せちゃう!」
男(フッ、デートスポットの予習は完璧……せいぜい俺の完璧なプランに酔いしれな)
女「『週刊モテタイ』なんかに載ってたようなデートコースで全然かまわないから!」
男(うぐぅ! 見抜きやがってぇ!)
女(フッ、見切った……!)
女「いいわよ」
男「今の時間だと二つやってるんだ。えぇと……『ソンビキングダム』と『離島恋物語』か」
男「ゾンビ物と恋愛物だけど、どっちがいい?」
女(ゾンビ物のが見たいけど……女の方からゾンビ物を提案するのは敗北を意味する……)
女「またお任せしちゃう!」
男「じゃあ、君が見たそうな『ゾンビキングダム』にしようか」
女(なんでバレた!?)
男(バレバレなんだよォ! てめえは恋愛物なんか見たら絶対爆睡するタイプッ!)
女ゾンビ『私もです……』
男「……」ジーン
女「……」ジーン
男(ゾンビパニック物と思いきや、結構泣かせるじゃねえかクソが!)
女(こんなB級映画で泣いちゃうなんて悔しいっ……!)
女「うん」
男「君なんかほら、泣いちゃってる!」
女「あなたこそ、目に涙の跡が……」
男(いちいち見抜きやがって……)
女(可愛くねえ野郎だ……)
男「……」ゴゴゴゴゴ…
女「……」ゴゴゴゴゴ…
男「……」ビキッ
女「……」メキッ
アドバイザー(何があったんだよ……前よりいっそう険悪になってる……)
アドバイザー「二回目のデートは……どうしますか?」
男「します」
女「します」
アドバイザー「なんで!?」
女「ホントね」
男「ほらあれ、マグロだ」
女「わぁ、すごい迫力!」
女(おいしそう……大トロ……)
女(だが、こんな気持ちを悟られてはいかぬ……水族館の魚をおいしそうだなんて……)
男「帰りは回転寿司にでも寄ってくかい?」
女(クソがァ!)
女調教師「ほら、飛んで!」
イルカ「キュイーッ!」ザバァッ
ワァァァァァ… パチパチパチ…
男(やっべえ、イルカよりあのお姉さん見ちゃうよ……)
女「イルカって大きいね!」
男「そうだね」
女「あのお姉さんの胸もね!」
男(ぐおおおお! バレてんじゃんッ!)
男「とても……」ビキッ
女「楽しかったです……」メキッ
アドバイザー(全然楽しそうじゃねえよ……)
アドバイザー「三度目は……どうなさいますか?」
男「します」
女「します」
アドバイザー「もう好きにしろ!」
女「社会人になるとなかなかね」
男「どう? 絶叫マシンでも乗る?」
男(本当は苦手だけど……男として乗らぬわけにもいくまい)
女「私絶叫マシン苦手〜! 泣いちゃうかも〜」
女(本当は大好きだけど……怖がっておく方がベターであろう)
男「ぎゃあああああああああああああああああっ!!!!!」
女「きゃあああああああああああああああああっ!!!!!」
男「ハ、ハハ……楽勝だったね……(もう二度と乗らねえ)」
女「怖い……もうこんなのイヤ……(もう一度乗りてえ)」
女「うん!」
チャラララ…♪ ウイーン…
男(やっぱ俺にはこういうやつのが合ってるわ)
女(つまらん……疾走してこその馬だろうがッ!)
男「今日も楽しかったよ」
女「私も……」
男「さてと、そろそろ化かし合いはやめようや」
女「!」
男「俺たちは狸でも狐でもねえんだ……ここらであんたとマジな話をしたい」
女「ふん……望むところよ」
男「世の中俺より優れた男なんざいくらでもいる。この通りプライドだって高くない」
男「だけどこれからも仕事は頑張るつもりだし、もし家族ができたらそれを命がけで守る覚悟ぐらいはあるつもりだ」
男「こんな俺でよければ……結婚してくれないだろうか」
女「……」
見りゃ分かるだろがよ
女「あなたを全面的に支えるような良妻にはなれないかもしれない……」
女「だけど、これからも女を磨き、夫になった人を立てられるような女になりたいと思っている」
女「こんな私でよければ……プロポーズお受けします」
男「……ありがとう」ギュッ
女「うん……」
女「……」
男(チョッロ! ちょっとしおらしくなってやったらこのザマかよ! このチョロインが!)
女(なんというチョロさ! お前はもはや罠にかかった獣よォ! このチョーローが!)
男「クックック……」
男「ハハハハハハハッ!!!」
女「ホホホホホホホッ!!!」
通行人(なんだあの黒いオーラがにじみ出てるカップルは……)
男「本日はささやかながら披露宴を開かせて頂きました」
女「お集まり頂きありがとうございます」
男「……」
女「……」
男(ひとまず婚活は終わったが、騙し合いはまだまだ終わらない――)
女(こいつとの騙し合いの結婚生活が楽しみすぎるッ!)
〜おわり〜
お幸せに
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1596538819
Source: イケイケ速報